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大阪地方裁判所 昭和53年(ワ)6613号 判決

一1 請求原因一1の事実(本件特許権の存在とその消滅)は、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第六号証と弁論の全趣旨によると、同一2の事実(専用実施権の設定と登録)が認められる。

そして、右争いのない本件発明の特許請求の範囲の記載と成立に争いのない甲第一号証(本件特許公報、別添の特許公報に同じ)によると、本件発明の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である。

(一) 風車を内装するとともに、側面には窓を有する風車函の開放上面に選別多孔板を位置させ、選別多孔板を揺動させながら風車を回転することによつて風車が起風した風を選別多孔板の孔に下から上へ吹き抜けさせ、選別多孔板上に供給される穀物中から小石など比重の重い夾雑物を選別する揺動型選穀機であること。

(二) 選別多孔板を吹き抜ける風によつて吹き上げられる穀物中の比重の軽い塵埃などの夾雑物を回収するため、上記選穀機を一部が開放している密閉状のケース内に収納すること。

(三) 風車函の両側外面と、ケースの両側内面と、ケースの上板とで形成された間隔を、上部は選別多孔板から吹き上がる含塵排風によつて気圧が高く、風車函の側面の窓に臨む位置では風車の回転による函内への吸入で気圧が低い空気の対流通路にしていること。

(四) 選別多孔板から吹き上がる含塵排風をケースの上板下面に当てて対流通路中を圧力を下げさせながら降下させ、これにより含まれている塵埃を自重で通路から更に落下することを許し、主として空気は側面の窓を通じ風車函内に吸入させて循環させ、塵埃をケースの底に回収すること。

(五) 以上を特徴とする選穀機における塵埃回収法であること。

2 そして、前掲甲第一号証によれば、本件発明は、右の構成を採ることにより、「比重の軽い微粉や塵埃を上記対流通路の下方のケース底板上に落下、沈積させ、微粉、塵埃を殆ど外に出すことなくケース内に回収する」(本件特許公報二欄一〇行目ないし一三行目)ので、「ケースの底に或る程度、回収されたら扉を開いて堆積している微粉、塵埃を外に取出し、廃棄すればよく、選別作業の環境改善に貢献すると共に、ケースは精密な密閉手段を必要とせず簡易に製作できる。」(同公報三欄二八行目ないし四欄一行目)という作用効果を奏することが認められる。

二 請求原因三のうち、被告が被告製品を業として製造販売したことは当事者間に争いがない。

三 そこで、被告が被告製品を業として製造販売したことが原告が有していた実施権の間接侵害になるか否かについて、以下判断する。

1 本件発明の塵埃回収方法が、「一部が開放している密閉状のケース」内に選穀機を収納していることを要件としていること(構成要件(二))は前認定のとおりであるが、右のうち「一部が開放している」ことと「密閉状」であることとは一見矛盾し、特許請求の範囲の記載のみでは、右の条件を満足する「ケース」の意味内容が明確であるとはいえないので、本件発明の明細書の他の記載をも参酌して、右要件の意味について考えることとする。

前掲甲第一号証によれば、従来の揺動型選穀機の欠点として、「選別多孔板の揺動運動と、上記選別多孔板の孔を下から上に吹き抜ける風力とにより選別多孔板上に供給される穀物中の小石、金属小片などの比重が重い夾雑物を穀物から選別除去する選穀機は周知である。しかしこの選穀機により選別作業を行うと穀物中に含まれたり、附着したりしている比重の軽い微粉や塵埃が選別多孔板を上に吹き抜ける風で舞い上り作業員が呼吸で吸込んだり、作業場に降つて積り、衛生上の見地から好ましくない。このため、従来は選別多孔板の上を濾過袋で覆つて吹き上がる風を入れ、舞い上つた微粉や塵埃を袋に残して空気だけを透過させる様にしているが、濾過抵抗のため風は袋の口周から外に逃げてどうしても風の全量を袋に入れることはできず、これにより袋に入らないで逃げた風に含まれている微粉、塵埃は作業場に飛散してしまい、大した効果は無い。」(本件特許公報一欄一六行目ないし三二行目)ことが指摘されており、本件発明は、この欠点を除去する目的でなされたことが認められる。

右の事実に、本件発明の主な作用効果が、前認定のとおり、微粉塵埃を殆んどケース外に出すことなくケース内に回収し、選別作業の環境改善に貢献するにあることをあわせ考慮すると、動揺型選穀機を収納するケースとしては、開口部の全くない完全密閉のものが望ましい、ということになる。

一方、前掲甲第一号証によれば、本件発明の明細書には、「選別多孔板上に外から穀物を供給するためや、選別多孔板上で夾雑物と分離された穀物を該板上から外に流出させるためなどの極く小さな開口を有する密閉状のケース内に上記選穀装置を収容し」、(本件特許公報一欄三五行目ないし二欄二行目参照)との記載、「上記ケース6が密閉状であると言うのは、穀物送り板5は選別多孔板1上に穀物を供給するための穀物落下口5´を有し、又、選別多孔板1上で小石、金属小片などと選別した穀物だけをケース外に流出させるため、選別多孔板1の突端1´を通す開口7や、ケース底に沈積した微粉、塵埃を取出すための扉や、逃(「堆」の誤植と認められる)積状態を外から見るために設けられた点検窓7´などがケースに設けられ、完全密閉とは言えないからである。」(同公報二欄二〇行目ないし二八行目)との記載のあることが認められる。

右の記載と明細書の他の記載からうかがわれる揺動型選穀機の選別作用をあわせ考えると、この種選穀機が選穀作用を営むには、穀物の供給口、夾雑物から選別された穀物の流出口、夾雑物の取出口などが必要不可欠であり、しかも、前認定の作用効果の項で引用した本件特許公報の記載(二欄一〇行目ないし一三行目)及び同公報の「含塵排風は、……落下を許された微粉や塵埃はケースの底に積り、ケースに開口7や、点検窓が設けられていてもそこからケースの外に出ることは殆ど無い。」(三欄九行目ないし一六行目)との記載をあわせ考慮すると、「一部が開放している密閉状のケース」とは、「選穀機としての機能を営むのに必要不可欠な、しかも塵埃を殆んど排出することのない開口部を設けてあるほかは密閉されたケース」の意味に解釈するのが相当である。

そして、「ケース」における外部からの総吸気量と外部への総排気量が相等しく、吸気口の数の増加を含めてその開口総面積を増せばそれだけ排気量も増大することは、この種選穀機の構成より自明であるから、右にいう「開口部」には、排気口としての作用を営むもののみならず吸気口としての作用を営むものをも含む、というべきである。

2 右見解のもとに、被告製品が「一部が開放している密閉状のケース」の要件を充足するかどうかについてみることとする。

(一) イ号物件について

イ号物件の構成と作用を説明したものであることについて争いのない別紙イ号図面説明書の記載によれば、イ号物件のケース(6)には開口として、ケースの正面壁(6a)に存在する選別多孔板(1)の突端(1´)を通す開口(7)、ケース(6)の天板(11)に設けられた孔(12)と穀物送り板(5)の上端との間隙(38)、ケース(6)の左右の両側面に形成された透孔群(13a)(13b)及び砕米排出筒(24)、石排出筒(25)が存し、これらのほかに引出式底板(22)の正面壁(6a)側に間隙部(34)の存することが認められる。

また、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第七号証及び別紙イ号図面説明書の記載によると、これらの開口、間隙部のうち開口(7)、間隙(38)、砕米排出筒(24)、石排出筒(25)は、風車の回転によつて選別多孔板上に吹き抜けた風によりケース(6)内の気圧の高い箇所に位置しているところから、排気口としての作用を営み、反面透孔群(13a)(13b)、間隙部(34)は、風車の回転による風車函内への吸入でケース(6)内の気圧の低い箇所に位置しているところから、吸入口としての作用を営むものであると推認することができる。

そして、「一部が開放している密閉状のケース」の意味についてさきに判示したところによれば、これらの開口、間隙のうち、開口(7)、砕米排出筒(24)、石排出筒(25)は、揺動型選穀機が選穀機能を営むのに必要不可欠な開口部に当たるが、間隙(38)、透孔群(13a)(13b))、間隙部(34)は、選穀機能を営むのに必須のものではない。

原告は、右の開口、間隙からの吸排気量は僅量で間隙部(34)は製造誤差ともいうべき隙間であるからイ号物件のケース(6)が「一部が開放している密閉状のケース」であることに変わりがない旨主張し、被告は、透孔群(13a)(13b)、間隙部(34)を設けることにより積極的に外部に塵埃を放出するとともに新鮮な空気を取り入れ選別多孔板(1)裏面などへの塵埃の付着を防止する作用効果を奏する旨主張する。

そこで、イ号物件の開口、間隙の吸気量についてみるに、前掲甲第七号証によると、右吸気量を熱式風速計により測定したところ、透孔群(13a)(13b)の吸気量は〇・五九m3/分、間隙部(34)の吸気量は〇・一一m3/分、送風機(風車(4))の上部排気側風量(風車の全吸気量)は五・二m3/分であることが認められるので、透孔群(13a)(13b)、間隙部(34)の存在により右吸気量と同量の含塵空気が前記排気口からケース(6)外に排出されており、その量は風車(4)の総排気量の約一三パーセントに当たること、仮に間隙部(34)を製造誤差ともいうべき隙間と考えて、透孔群(13a)(13b)のみからの吸気量の風車(4)の総排気量に対する割合を求めると一一パーセント強となる。

また、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第五号証によると、イ号物件一台につき四つの測定条件を設定し、その吸排気量をサチユレーシヨン(飽和)方式により測定した結果では、被告の主張二3(一)のとおりイ号物件の空気吸排気量は一・〇四m3/分から一・一六m3/分であることが認められるから、風車の総排気量を前掲甲第七号証の数値より高い六・〇m3/分であると仮定しても、右総排気量に対するイ号物件の吸排気量の割合は約一七パーセントから一九パーセントになる。

更に、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第九号証によると、米四万五〇〇〇グラムと糠三〇〇〇グラムを混合してイ号物件に供給し、選穀された米と糠及びケース内の糠を回収した結果では、左表のとおり二〇九グラムの糠が飛散し、集塵率(飛散及びケース内の糠を一〇〇としたケース内回収糠の割合)は八六パーセントであること、すなわち風車の起風により吹き上げられた糠のうち一四パーセントがケース外に飛散したことが認められる。

<省略>

右で認定のとおり、イ号物件は選穀機としての機能を営むのに必要不可欠とはいえない透孔群(13a)(13b)を有し、これらが存することにより風車の総排気量の一一パーセント強がケース外に排気されること、またイ号物件の空気吸排気量が風車の総排気量の約一七ないし一九パーセントであること、その風車の起風により吹き上げられた糠のうち一四パーセントがケース外に飛散することからすると、イ号物件のケース(6)は、前判示の「選穀機としての機能を営むのに必要不可欠な、しかも塵埃を殆んど排出することのない開口部を設けてあるほかは密閉されたケース」とは認められず、したがつて、イ号物件方法は、本件発明の構成要件(二)を充足しない、といわなければならない。

(二) ロ号、ハ号物件について

ロ号、ハ号物件の各構成と作用を説明したものであることについて争いのないロ号図面説明書、ハ号図面説明書の記載によれば、ロ号物件のケース(6)には開口として、ケースの正面壁(6a)に存在する選別多孔板(1)の突端(1´)を通す開口(7)、ケース(6)の天板(11)に設けられた孔(12)と穀物送り板(5)の上端との間隙(38)、ケース(6)の左側面に形成された透孔群(13)、砕米排出筒(24)、底板(22)の前方の底穴(23)、石排出筒(25)が存すること、ハ号物件のケース(6)には開口として、ロ号物件における「左側面に形成される透孔群(13)」に代えて「左右の両側面に形成された透孔群(13a)(13b)」が存するほかはロ号物件と同じものが存することが認められる。

また、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第八号証、ロ号図面説明書、ハ号図面説明書の記載によれば、ロ号、ハ号物件のこれら開口のうち、開口(7)、間隙(38)、砕米排出筒(24)、石排出筒(25)は、風車の回転によつて選別多孔板上に吹き抜けた風によりケース(6)内の気圧の高い箇所に位置しているところから、排気口としての作用を営み、反面透孔群(13)(ハ号物件では透孔群(13a)(13b)、底穴(23)は、風車の回転による風車函内への吸入でケース(6)内の気圧の低い箇所に位置しているところから、吸入口としての作用を営むものであると推認することができる。

そして、「一部が開放している密閉状のケース」の意味についてさきに判示したところによれば、これらの開口のうち、開口(7)、砕米排出筒(24)、石排出筒(25)は、揺動型選穀機の選穀機能を営むのに必要不可欠な開口部に当たるが、間隙(38)、透孔群(13)(ハ号物件では(13a)(13b)、底穴(23)は、選穀機能を営むのに必須のものではない。

原告は、右の間口、間隙からの吸排気量は僅量であるからロ号、ハ号物件のケース(6)が「一部が開放している密閉状のケース」に当たる旨主張し、被告は、透孔群(13)(ハ号物件にあつては(13a)(13b))、底穴(23)を設けることにより積極的に外部に塵埃を放出するとともに新鮮な空気をとり入れ選別多孔板(1)裏面などへの塵埃の付着を防止する作用効果を奏する旨主張する。

そこで、ロ号、ハ号物件の吸気量についてみるに、前掲甲第八号証によると、ロ号物件において、透孔群(13)からの吸気量は〇・一八m3/分、底穴(23)からの吸気量は〇・五m3/分、送風機(風車(4)(4´))の吸込側風量は五・五m3/分であることが認められるので、透孔群(13)、底穴(23)の存在により右吸気量と同量の含塵空気が前記排気口からケース(6)外に排出されており、その量は風車(4)(4´)の総排気量の一二パーセントに当たることになる。ハ号物件は、透孔群(13)に代えて透孔群(13a)(13b)を有するので、ロ号物件の右数値以上、少なくとも同等の数値を示すものと、その構成自体から推認することができる。

また、前掲乙第五号証によれば、ロ号物件一台につき四つの測定条件を設定し、その吸排気量をサチユレーシヨン(飽和)方式により測定した結果では、被告の主張二3(一)のとおりロ号物件の空気吸排気量は一・四八m3/分から一・七五m3/分であることが認められるから、風車の総排気量を前掲甲第八号証の数値より高い六・〇m3/分であると仮定しても、右総排気量に対するロ号物件の吸排気量の割合は約二五パーセントから二九パーセントになる。

更に、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第一〇号証によると、米四万五〇〇〇グラムと糠三〇〇〇グラムを混合してロ号物件に供給し、選穀された米と糠及びケース内の糠を回収した結果では、左表のとおり一〇一グラムの糠が飛散し、集塵率(飛散及びケース内の糠を一〇〇としたケース内回収糠の割合)は八二パーセントであること、すなわち風車の起風により吹き上げられた糠のうち一八パーセントがケース外に飛散したことが認められる。

<省略>

右で認定のとおり、ロ号、ハ号物件は選穀機としての機能を営むのに必要不可欠とはいえない透孔群(13)(ハ号物件は(13a)(13b))、底穴(23)を有し、これらが存することにより風車の総排気量の一二パーセントがケース外に排出されること、またロ号物件の空気吸排気量が風車の総排気量の約二五ないし二九パーセントであること、その風車の起風により吹き上げられた糠のうち一八パーセントがケース外に飛散すること、透孔群がロ号物件より多いほかは同一構成のハ号物件はロ号物件の右数値以上、少なくとも同等の数値を示すものと推認されることからすると、ロ号、ハ号物件のケース(6)も、前判示の「選穀機としての機能を営むのに必要不可欠な、しかも塵埃を殆んど排出することのない開口部を設けてあるほかは密閉されたケース」とは認められず、したがつて、ロ号、ハ号物件方法は、本件発明の構成要件(二)を充足しない、といわなければならない。

3 次に、被告製品方法が本件発明の構成要件(三)を充足するか否かについて検討する。

前掲甲第七、第八号証、別紙イ号図面説明書、ロ号図面説明書、ハ号図面説明書の記載からうかがわれる被告製品の構造・選穀作用によると、イ号物件及びロ号・ハ号物件に穀物を供給し、選穀作用を行わせた場合における空気通路は、次のとおりであると推認される。

(一) イ号物件

別紙イ号物件風路図に表示のとおり、風車函(3)内の風車(4)を回転させると、風車函(3)の窓(2)の近辺が負圧となり、風車函(3)とケース背面壁(6d)とフレーム(26a)(26b)と引出式底板(22)とで囲まれた空間によつて形成された迂回風路Eから、風車函(3)の窓(2)と透孔群(13a)(13b)とのそれぞれの間隙で形成される吸入風路Bを経て、窓(2)より風車函(3)内へ空気を吸引するとともに、透孔群(13a)(13b)及び間隙部(34)からも、吸入風路Bを経て窓(2)より風車函(3)内へ外気を吸引し、風車函(3)内で加圧され、選別多孔板(1)より、その上方の選別多孔板(1)、載置筐(20)の両側壁(20b)(20c)、点検蓋(36)、底板(33)及び流れ板(37)で囲まれた上方風路Cに噴出された空気は、その一部が開口(7)よりケース(6)外に吐出され、載置筐(20)内を上方に通過し底板(33)と流れ板(37)との間を抜け載置筐後壁(20d)を越え天板(11)に当たつた空気、及び選別多孔板(1)上方部と流れ板(37)下面よりなる空間を通過した空気は、吹き返し多孔板(21)の周囲に形成される旋回風路Dに達し、その一部が砕米排出筒(24)、石排出筒(25)より機外に吐出され、残りは迂回風路Eに達し、吸入風路Bを経て再び風車函(3)内に吸入され、風車函(3)内で加圧された空気が選別多孔板(1)より上方風路Cに噴出する際に選別多孔板(1)上に供給された白米中より分離した僅かの微粉塵埃は、その一部が開口(7)、間隙(38)、砕米排出筒(24)、石排出筒(25)の各開口部より空気とともにケース(6)外に排出され、残りの一部は迂回風路Eの下方の引出式底板(22)上に重力と慣性の作用で堆積し、他部は再び風車函(3)内に空気とともに吸引されて上方風路Cに噴出される。

(二) ロ号、ハ号物件

別紙ロ号、ハ号物件風路図に表示のとおり、風車函(3)内の風車(4)(4´)を回転させると、風車函(3)の窓(2)(2´)の近辺が負圧となり、風車函(3)とケース背面壁(6d)とフレーム(26a)(26b)と引出式底板(22)とで囲まれた空間によつて形成された迂回風路Eから、風車函体(3a)(3a´)の内側面(3b)(3b´)の間で形成される吸入風路Bを経て、同内側面の窓(2)(2´)より風車函(3)内へ空気を吸引するとともに、四隅の支脚(39)によつて形成されたケース(6)内の下部空間に通じる底穴(23)、透孔群(13)(ハ号物件では(13a)(13b))からも、吸入風路Bを経て窓(2)(2´)より風車函(3)内へ外気を吸引し、風車函(3)内で加圧され、選別多孔板(1)よりその上方の選別多孔板(1)、載置筐(20)の両側壁(20b)(20c)、点検蓋(36)、底板(35)及び流れ板(37)で囲まれた空間によつて形成される上方風路Cに噴出された空気は、その一部が開口(7)よりケース(6)外に吐出され、載置筐(20)内を上方に通過し底板(33)と流れ板(37)との間を抜け載置筐後壁(20d)を越え天板(11)に当たつた空気、及び選別多孔板(1)上方部と流れ板(37)下面よりなる空間を通過した空気は、吹き返し多孔板(21)の周囲に形成される旋回風路Dに達し、その一部が砕米排出筒(24)、石排出筒(25)より機外に吐出され、残りは迂回風路Eに達し、迂回風路E中に設けられた堰止壁(41)を迂回し、吸入風路Bを経て再び風車函(3)内に吸入され、風車函(3)内で加圧された空気が選別多孔板(1)より上方風路Cに噴出する際に選別多孔板(1)上に供給された白米中より分離した僅かの微粉塵埃は、その一部が開口(7)、間隙(38)、砕米排出筒(24)、石排出筒(25)の各開口部より空気とともにケース(6)外に排出され、残りの一部は迂回風路Eの下方の引出式底板(22)上に重力と慣性の作用で堆積し、他部は再び風車函(3)内に空気とともに吸引されて上方風路Cに噴出される。

(三) すなわち、被告製品方法にあつては、空気の通路が吹き返し多孔板(21)の周囲に形成されている。そして、本件発明の構成要件(三)に対応する、風車函(3)の両側外面とケース(6)の両側内面とケースの天板(11)とで形成された間隙は、風車函(3)(ロ号、ハ号物件にあつては(3a)(3a´))の両側外面に続く載置筐(20)の両側壁(20b)(20c)及び同両側壁間に設置されている底板(33)によつて風の流入が防止されて空気通路とならず、空気は、吹き返し多孔板(21)の周囲に形成される旋回風路D、風車函(3)(ロ号、ハ号物件にあつては(3a)(3a´)とケース背面壁(6d)とフレーム(26a)(26b)と引出式底板(22)とで囲まれた空間によつて形成された迂回風路Eを通る。

右事実によれば、被告製品を使用した際に生じる空気通路は、本件発明の構成要件(三)のように風車函(3)(ロ号、ハ号物件にあつては(3a)(3a´))の両側外面とケース(6)の両側((6b)(6c))内面とケースの上板(11)で形成された間隔を空気の対流通路にするものではないことが明らかであり、したがつて、被告製品方法は、本件発明の構成要件(三)を充足しない、というべきである。

四 以上のとおりであつて、被告製品方法は本件発明の技術的範囲に属しない、というほかなく、被告が被告製品を業として製造販売することは、原告が有していた前判示実施権を侵害するものではない。

よつて、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないから、これを棄却することとする。

〔編註〕 本件特許発明に関する事項は左のとおりである。

発明の名称 選穀機における塵埃回収法

出願    昭和三七年一月一八日(特願昭三七―一九四三)

公告    昭和四八年八月六日(特公昭四八―二六一四七)

登録    昭和五〇年五月一六日(第七六九三四八号)

特許請求の範囲

「風車を内装すると共に、側面には窓を有する風車函の開放上面に選別多孔板を位置させ、選別多孔板を揺動させながら風車を回転することによつて風車が起風した風を選別多孔板の孔に下から上へ吹抜けさせ、選別多孔板上に供給される穀物中から小石など比重の重い夾雑物を選別する揺動型選穀機において、選別多孔板を吹抜ける風によつて吹上げられる穀物中の比重の軽い塵埃などの夾雑物を回収するため、上記選穀機を一部が開放している密閉状のケース内に収納し、風車函の両側外面と、ケースの両側内面と、ケースの上板とで形成された間隔を、上部は選別多孔板から吹上る含塵排風によつて気圧が高く、風車函の側面の窓に臨む位置では風車の回転による函内への吸入で気圧が低い空気の対流通路にして選別多孔板から吹上る含塵排風をケースの上板下面に当てて対流通路中を圧力を下げさせながら降下させ、これにより含まれている塵埃を自重で通路から更に落下することを許し、主として空気は側面の窓を通じ風車函内に吸入させて循環させ、塵埃をケースの底に回収することを特徴とする選穀機における塵埃回収法。」

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